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世界にひとつの、
珊瑚のかけら。

series 1

 

1/35のはじまり。

五島列島の中でも一番大きな福江島。その福江島の南に富江という小さな港町はあります。そこはかつて珊瑚漁が盛んだった町。全盛期は一攫千金を夢見た漁師が集まり賑わっていましたが、いまではいくつかの珊瑚店を残すのみとなってしまいました。

2016年、その富江で30年ほど空き家になっていた築80年の民家を改装し、さんごさんという私設図書館をスタートさせました。地域と関わりを築いていくなかで、富江が持つ歴史に魅せられた私たちは、縮小してしまった富江珊瑚の魅力を、新しいかたちで発信できないかと思うようになりました。

珊瑚店を営む田中さんと縁あって知り合い、珊瑚のかけらを見せていただきました。珊瑚を加工する際にうまれた「端材」として市場には出回らないものですが、1年で数ミリと言われる宝石珊瑚の成長速度を想像すると、海のロマンを感じずにはいられませんでした。珊瑚のかけらは、かつて富江に集った海の男たちの、夢のかけらのようにも思えます。

MMAAの手で新しい魅力を見出された珊瑚のかけらを眺めながら、100年前の夢のかけらが、現代によみがえったように感じています。1/35(=珊瑚のかけら)を身につけることで、富江に思いを馳せていただき、いつか足を運んでいただけたなら幸いです。

━    さんごさん

伝統文化の隣にそっと置かれてきた珊瑚のかけら。

宝石珊瑚には、世界中でお守りや宝飾品として珍重されてきた長い歴史があります。 地中海で産出する珊瑚はイタリアの人々の間では魔除けやお守りとして、また中国では子宝を象徴する宝石として珍重されてきました。ギリシャ神話では英雄ペルセウスがメドゥーサの首を切り取ったときに滴った血が地中海に落ちて珊瑚になったと伝えられており、その他様々な国で装身具や祭祀具として用いられています。

日本では明治時代に珊瑚漁がはじまり、五島の富江町では質の良い珊瑚が獲れるばかりでなく、宝石珊瑚を通常より深く彫る「五島彫り」という伝統工芸技術で世界中に名前を知られる程に有名な町となりました。

そんな加工の過程で使えなくなった端材があります。その端材と呼ぶにはもったいない魅力的な珊瑚のかけらに可能性を感じた富江町の私設図書館「さんごさん」の発起人たち。珊瑚の魅力をあまり知らない若い世代にも珊瑚や五島の魅力を知ってもらいたいと「1/35 」プロジェクトをスタートさせました。

深海で1年に2~6mm程度しか成長しない宝石珊瑚は数百年~数千年かけて成長したものが採取されます。伝統的な職人技術によって、原木だけでも十分に価値があると言われる珊瑚の価値と魅力を最大限に引き出し、宝飾品として世界中の人に愛されてきました。

しかしながら、明治時代初期から続いた乱獲のために五島近海の珊瑚の産出量は減少。現在は漁業規制がかかっています。富江町では最盛期に50軒以上あった珊瑚店も、今では3~4軒と少なくなっています。また、深い海で穫れる宝石珊瑚のみならず、わたしたちが珊瑚と聞いてまずイメージするような珊瑚礁も温暖化の影響を受け、地球全体で大規模に死滅しています。

その素晴らしくも儚い文化の中で、「ちょっと使えないかもな。」とそっと横に置かれてきた珊瑚のかけら。

世界中で「生命」を象徴してきた珊瑚。
五島の職人や、珊瑚漁師たちの生活を繋いできた珊瑚。
その珊瑚という「生物」そのものが、いま危機にあること。
宝飾品としては価値がなくなった「端材」を使って、再び装身具をつくること。
海の中で生きていた頃の形と、素晴らしい職人たちの作業の痕跡が同居していること。

さまざまな断片が、繋がり、絡み合いながら今回の作品群は生まれました。

1/35 series は珊瑚のかけらが手にできる時にのみ35個ずつ製作する変則的なシリーズです。

━    MMAA    前田真理子

協力



Profile

MMAA/前田真理子
日本大学芸術学部卒業。2014年よりMMAAをスタート。
アクリル、石、シルバーを主な素材として、コンセプト設計やリサーチを大切にする制作方法で活動している。

2014.07 ワークショップ「音を装う 音の形のブローチ作り」( 練馬区立美術館 )
2014.09 一点展 ( SHISEIDO THE GINZA )
2015.05 個展 : MMAA exhibition ( graf )
2015.07 spiral market selection vol.320 ( spiral 青山 )
2015.10 個展 : MMAA study 2015 I’m not OK, You’re not OK. ( undo ̄ )
2016.02 MMAA LIMITED SHOP ( 伊勢丹新宿本館 1 階 )
2016.12 New Jewelry ( 3331 Arts Chiyoda )
2017.04 個展 : MMAA exhibition 2017 ( graf )
etc…



さんごさん
2016年8月に五島列島福江島の富江町にオープン。その後1年間で、大学教授や漫画家、芸人などの著名人から地元の主婦、おじいちゃん・おばあちゃんまで100名を超える幅広い人たちの「人生の3冊」が集まる。国内外の雑誌やwebメディア、テレビ番組などに取り上げられているほか、ミッドタウンで開催された「地域×デザイン展」にも出展。2017年からはコーヒースタンド「CORAL COFFEE」を併設するほか、島内外の仲間たちと取り組む実験が複数進行中。



photographer 西部裕介